FLOWER FLOWER 平和は 与えられるものではない。

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FLOWER FLOWERの特集だよ♪可愛いのもいっぱいあるよ♪

春休みの話題で持ち切りの騒がしい教室。

少しだけ開けられた窓から吹き込む柔らかな風が春の訪れを伝えていた。

春…か。

まいやんはきっと忘れてるやろ?

あの日は確か去年の三月。卒業式の日。

アカン、遅刻や。

先輩たちの卒業をお祝いする大切な日に限って鳴らなかった目覚まし時計を恨みながら走る桜の花びらがひらひらと舞う並木道。

視界をやかましいほどにピンクに染める木々。

走りにくいこんな制服も、スカートを靡かせるこんな柔らかな風もなくなればいいと思った。

花飾りが飾られた校門をくぐり、こんな時間のせいか誰もいない昇降口で靴を乱雑に履き替え、上履きのかかとの部分を踏み静かな校舎を走る。

いつもなら飛んでくるであろう先生からの怒声はなく。代わりに自分の足音だけが反響して聞こえた。

「わっ!!」

階段から廊下に続く曲がり角、桜の香りが舞う空気の中、突然ふわりと安心するような柔軟剤の香りと柔らかなものに包まれた。

「ご、ごめん、大丈夫?」

顔を上げるとそこにいたのは私の初恋の人で、思わず息を詰まらせた。

なんでこんなところにいるのかも、なぜななが初恋の人に抱きしめられているのかもわからなかったけど、「桜の花びらついてるよ」とそっと頭に触れてくれた時、春もいいもんやなって思った。

まいやんが頭に付いた花びらをとってくれたあの日、春が好きになった。

でもきっとまいやんの中では何気ない日常の一コマに過ぎなくて、まいやんの中ではななのことなんて同じ学校に通う後輩の一人に過ぎひんのかもしれへん。

それでもななはまいやんのことが好きで、そのキレイな顔を遠くから見るたびに、すれ違うたびに鼻腔をくすぐる柔軟剤の匂いを嗅ぐたびに、まいやんを思い出して胸の奥がきゅんと鳴った。

あれから一年。卒業式まではほんの数日しか残っていない。

結局ななは何も言えないまま…。

窓から見える桜が、風に舞い空をピンクに染めていく。

昔は嫌いだったこの光景も今ならきれいに見えるはずなのに、何故だか胸の奥がきゅっと痛んだ。

空がピンクに染まったころ、まいやんはこの町からもう旅立ってしまう。

今更やけど、まいやんと一度くらい恋をしたかった。

まいやんの隣にいたくて、まいやんの手に触れたくて、触れてもらいたくて…。

春風がサラサラと教室の隅から隅まで悪戯に吹いている。

頬を撫でる柔らかな風にあの日を思い出した。

ななの初恋は窓の外の桜とは違い、咲かないまま思い出に変わっていくんやな。

淡いピンクの世界を切り開きながら進む電車の中。

ドア横に背を付け、車窓の外で舞う桜の花びら一つ一つを見逃さないように眺めていた。

まいやんは気づいてた?それとも気付いてなかったん?

同じ電車、同じ車両。二つ前の駅で降りるななのこと。

ななと同じようにドア横に背を付け車窓の外を見つめる少し猫背気味のまいやんが大好きやった。

一度も目はあったことないし、一度も背を付けるドアが被ったことはない。

せやけど、ちらほらと席は空いているのに絶対に座らず立ち続けるまいやんのその凛とした姿がかっこよくて、大好きで…。

そんな毎日ももうすぐ終わる。

桜の花びらが一つ散るごとに、まいやんとの時間が少なくなってしまうような気がして、ななは車窓に手を当て一つ、また一つと舞い散る桜の花びらを掴もうとした。

やっと町が目を覚ましだした、そんな時間。

駅の階段を駆け上がってまいやんを追い越すたびに胸が高鳴っていた。

すたすたと歩く背中が横顔に変わり、やがて見えなくなる。

振り向きたくて、でも振り向けなくて。

ウラハラな片想い。

ふわりと香った優しい柔軟剤の香りを胸いっぱいに吸い込んで改札を出る。

サラサラと結っていない髪を靡かせる青春はまるで、素直になれないななを責め立てているみたいやった。

今年の四月にはこんなふうにまいやんに会えんくなるんやね。

あんなに大嫌いやった制服を脱ぐ日が近くなるのがこんなにも淋しいなんて知らなかった。

知りたくなかった。

こんなにも切なくて淋しい気持ちにさせる春は意地悪や…。

それでも何故か嫌いになれなくて、むしろキレイやと思わせるんは、きっとまいやんのせい。

淋しさに包まれ静かな教室。

少しだけ開いた窓から吹き込む風が、濡れた頬を優しく乾かしていく。

空がもうすぐピンクに染まる。

もうすぐまいやんはこの町から旅立って行くんやね。

今更やけど、今更すぎやけど、まいやんと一度くらい恋をしてみたかった。

夏のように熱くなくていい。

そばにいるときは触れた肩に体重を少し預けて。

一緒に出掛けた時はどちらからともなく手を握って。

ただ同じ空気を吸っているだけでいい。

そんな、触れたら消えてなくなってしまいそうなほどに儚い、春のような恋を。

春風がサラサラと、教室の隅から隅まで悪戯に吹いている。

頬を撫でる柔らかな風に、胸の奥がきゅっと痛くなった。

ななの初めての恋は咲かないまま、思い出に変わっていくんやね。

また一つ、舞い落ちた桜の花びらが柔らかな春風に吹かれ、少し開いた窓から教室に舞い込んだ。

ピンクの欠片がななの前を横切る。

…春が来たんやな。

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こんばんは。

今日もTwitterのほうのリクエストで、flowerさんの「spring has come」という曲を元に書いてみました。

これもまた儚い曲でですね、儚いものが大好きな私にはド直球で、書いててとても面白かったです。

一昨日よりは少し上手く書けていたらいいんですけど、どうでしたかね?

リクエストはあともう一つありますので、そちらのほうもよろしくお願いいたします。

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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