androp 目・腰・ノドにコンチネンタル。
andropの本質はその自由性にある
miwaの5thアルバム『SPLASH☆WORLD』のレビュー・感想です。オリジナルアルバムとしては4th『ONENESS』(2015)から1年10ヶ月ぶり。3rd→4thも約2年でしたしコンスタントなリリース間隔です。
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当ブログの普段のラインナップを見るとmiwaを紹介するのは少し意外に思われるかもしれません。今の10代が聴いていそうなのも聴くんだという意味で。笑
実は前にもで本作に収録されている「シャンランラン」について軽くレビューしたのですが、最近からのファンというわけではなく結構前から好きなのです。自分でも驚きましたが当ブログを”miwa”で検索したらがヒットして、その頃から気になる存在だったみたい。
miwaを好きな理由は楽曲のクオリティがなかなか高いと思うというのが主ですが、小柄でハイトーンという個人的嗜好にマッチしているからというのもあります。少し脱線しますが以下補足()。
前にで「ディーバ系の歌姫が苦手」という旨のことを書きましたが、miwaタイプの歌手はその対極とまでは言わないものの遠い位置にいますよね。つまり好みだということです。
僕が好きになる女性ソロ/女性ボーカルバンドについては当ブログから推し量ってくださいとしか言えませんが、声量があり且つ余裕を感じさせる歌声が好きな傾向にあるのは確かです。声量に関して申し分のないディーバ系を苦手とする最大の理由はこの余裕のほうにあります。
誤解のないよう明確にしますが、ここで言う余裕とは何オクターブ出せるだとかもっと声を張れるだとかいう声楽的な話ではありません。この意味ではむしろディーバ系に分があるでしょう。
ここで言いたいのは歌声から受ける印象の話で、感覚的に言えばディーバ系の歌唱は熱…伝導・対流・放射していつまでも残るイメージ。一方でmiwa系は風…指向性があって吹き抜けたら消える感じ。
優劣の問題ではなく好みの話に過ぎないと断っておきますが、僕は後者のほうが無駄がなくて(余裕があって)心に響くと感じます。個人個人に歌が届けられていると思えるんですよね。逆にディーバ系は集団或いは空間自体に歌を放っているように感じる。これが風と熱の違い。
ごちゃごちゃと書きましたが要は「声が好み」の四文字で済む話です。笑 ということで前置きが長くなりましたがまずはCDから見ていきましょう。初回盤付属のDVDについてはその後で。
01. SPLASH
音楽番組でも披露されていましたしアルバムタイトルの一部を含むので、本作のリードトラック兼表題曲と言っていいでしょう。”水”(の循環)がテーマの曲ですが、ただ爽やかなだけの曲にはなっていません。
Aメロ・Bメロは憂いを帯びた旋律に水音が聴こえそうな歌詞が乗るという切ない立ち上がり。アレンジも控えめで歌声が際立つ。しかし途中からギターとキックが入ると一気にキャッチーに振れ、miwaの曲らしさが顔を出します。
サビはまさに水飛沫が上がるようなイメージ、楽器隊も弾けて一気に曲が走り出します。”はじける水のリズム”で更に跳ね出し、”SPLASH!”が連呼されるパートは別の曲のような盛り上がりを見せますね。ブラスセクションが気持ち好い。
この”SPLASH!”のところ、最初は正直ダサいという感想を持ちましたが、何度も聴くうちに癖になってきて良いと感じるようになりました。笑 miwaの曲にはこのパターンが結構あると思うのですが、このあたりはNAOKI-Tのセンスの絶妙さかな。
2番ではアレンジに疾走感が生まれ、最初は哀しげに響いていた旋律も流れるような印象へと変わります。落ちサビが2番にくる展開に少し驚かされますが、続く3番もストリングスとピアノを軸に静かな流れになることを考えると、この曲自体も循環の構成になっているのだと思いました。とはいえ最初と全く同じではなく変化を感じさせるのが憎い編曲。
02. 結 -ゆい-
NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)2016の書き下ろし課題曲。リリース的にはいちばん新しいシングル曲(21st・2016)ですが、Nコン関連の番組を始め『みんなのうた』(NHK)でも使用されていたので去年の夏から馴染み深い曲です。
中学校の部の課題曲というだけあって歌詞は10代の共感を得られそうな内容です。メロディにも奇を衒わない素直さがあり、聴き易いひいては歌いたくなるような綺麗な旋律だと思います。
Nコン関連番組を観ていたせいか中学生の合唱Ver.がオリジナルのような印象を持っているので、miwaのはセルフカバーのように感じます。他の音楽番組ではやけに声を張って歌っていて(それこそ前置きで書いたディーバ系のようで)違和感がありましたが、CDでは抑え気味だったので安心。
03. Princess
20thシングル(2016)で両A面のうちの一曲。『BAKE』(森永製菓)のCMソングだったこともあり歌詞の最後に”チョコ”が出てきますが、タイアップゆえに捻じ込まれたような気がしてならない。笑
この曲はなんといってもマンドリンが素晴らしいです。音楽番組やライブではmiwa自身が演奏していたと記憶していますが、クレジットを見る限りCDではNAOKI-Tの演奏のようです。
落ち着いたアレンジに微風のようなメロディなのでパッと聴きでは地味だと思っていたのですが、段々とメロの綺麗さとそれに寄り添う心地好い編曲の妙がわかってきて好きになりました。間奏の”Hey!”も例によって最初は「ん?」と思いましたが、MVを観たらゆるい雰囲気で許せちゃった。
歌詞でずっと気になっているのが、”千切りはできないけど 味噌汁くらい作れるよ”という一節。難易度逆じゃない?って思う。僕が想定している”味噌汁”のハードルが高いのかもしれませんが、一応料理は出来るから切り方のほうが基本では?と思っちゃう。笑
04. 夜空。feat.ハジ→
18thシングル(2015)で両A面のうちの一曲。ハジ→をボーカルにフィーチャーしたデュエットソングで、作詞作曲もmiwaとの共作になります。03.「Princess」の流れからこの別れのナンバーがくると意味深に響きますね。
この曲でいちばん好きなのは間奏~Aメロにかけてのピアノ。特にAメロバックの今にも消え入りそうな感じが良い。続くBメロからデュエット開始で、すれ違う男女の機微が描かれます。ハジ→とmiwaの声の落差に感情を揺さ振られる。
サビはわざとらしいぐらいの泣きメロですがそれだけに胸にダイレクトに刺さり、聴く状況によっては切なさ爆発・涙不可避の強烈な旋律ではないでしょうか。特にラスサビの煽り方は泣かせにきているなと感じる。
2番の後に長めのCメロが挿入されますがここも結構好きです。特にmiwaパート”私は あなたを辿っていました”~のメロの素敵さには惚れ惚れする。
05. 君と100回目の恋
miwaも主演を務めた同名映画の主題歌ですが、映画の曲としては次の06.「アイオクリ」のほうが有名じゃないかな。『君と100回目の恋 Original Soundtrack』(2017)は持っていないので確認はできませんが、そちらに収録されているものとはアレンジが異なるそうです。
映画も観ていないので歌詞を詳しく解説することはできませんが、タイムリープものなんですよね?確かに歌詞もそれを思わせるような内容になっていて、感謝と別離が歌われています。”ありがとう”と”さよなら”で構成されているところを見ると、ベクトルが違えど04.「夜空。」のラストから繋がっているのかなと妄想が捗る。
ここまでの4曲が全てメインディッシュ級だったので、ここで比較的大人しめの曲がくるのはアルバムの流れとしては正しいと思います。ここで一旦ホッとしないとヘビーすぎるよね。
06. アイオクリ
こちらは劇中歌で、設定上は作中のバンドThe STROBOSCORPの曲ということだったはず。『MUSIC STATION』だったと思いますがバンド名義でもTVで披露されていましたね。
こちらもサントラ収録のものとはアレンジが違うようですが、本作でもボーカルには坂口健太郎が参加しています。そして演奏は作曲者の内澤さんがフロントマンを務めるバンド、andropによるものなので彼らのファンにとっても嬉しい内容ですね。
これも映画を観ていればもっと歌詞が刺さるんだろうなということはわかります。”時間”の大切さに重きを置いた内容で、切ない場面で流れるんだろうなと想像できる。
あれこれと説明する必要がないくらい素直に良い曲で、特にサビのメロディの良さには普遍的なものがあると感じます。恋愛ものの邦画にはこのくらいのわかりやすさが正義だよね。
07. シャンランラン
厳密には「feat.96猫」Ver.がですが、TVアニメ『ふらいんぐうぃっち』OP曲。本作のはmiwa単独Ver.で、20thシングル(2016)のアニメ盤ではない方に収録されたものと同じです。
冒頭でも書いた通りにて一度軽くレビューしていますが、miwaの中でも一二を争うくらい好きな曲なのでここで詳しく再レビューします。アニメのOP映像込みのほうが魅力を伝えやすいのですが、生憎公式にはPVしかなかったので雰囲気だけでもと埋め込みました。一応曲も流れます。
この曲の素晴らしさは、まずクラップが効果的に使われていること。クラップが入るとダンサブルな質感が強くなると思いますが、同時にハッピー感が醸されるのが堪らなく好きです。人工音だとしても手の音にはプリミティブな魅力があると言えます。これがアニメOP映像もあるとより伝わるんですけどね。
次にカントリーアレンジ。マンドリンが印象的な03.「Princess」と両A面だった「シャンランラン」ですが、実はこちらにもマンドリンが使われているという共通項があります。バンジョーにアコギにアコーディオンも華を添えていますが、青森を舞台に魔女という西洋の要素を取り入れた作品の世界観を考えると、これほど合うサウンドはないと思う。
このカントリー調をベースにNAOKI-Tの遊び心が炸裂するのも素敵です。特に1番後の間奏は一瞬ダブステップに振れるのかと思ってドキドキしました。クラップもそうですが、ダンスミュージックにありがちな”Ho!”があるのも共通の解釈だなと思う。このギャップがいいよね。
次にメロディ。この爽やかでキュートな旋律こそmiwaにぴったりではないでしょうか。サビはなかなかに乱高下が激しいし譜割りを正しく把握しないと微妙になりそうですが、そこはmiwaの天性のセンスによって高次元に昇華されていると感じます。
最後に歌詞と歌声のマッチング。miwaの声はかなり甘い部類だと思いますが、そのスウィートさが日常的な歌詞にこの上なく馴染んでいますよね。特にツボなのは2番の”動画に撮ったから”の”から”の発声。可愛すぎる。
サビの”いいエッセンス”もお気に入り。アニメだと聴き取れなくて「”ちょっと変わってるくらいが”いいえすすーってなんやねん」と思っていた。笑 時間押しまくって朝4時/5時台に放送されていたのにリアルタイムで観ていたから(土曜深夜放送だったからね)聴き取り力が落ちていたと言い訳。
08. ATTENTION
8曲目にしてようやく何のタイアップ/フィーチャリングもない曲の登場。そう考えるとmiwaの曲って重宝されていますね。
タイトル通り警鐘的な歌詞が乗せられたロックナンバーで、コーラスワークからもヒリヒリとした空気感が伝わってくる。ここまでの流れとは雰囲気の異なるダーティ路線の曲なので、本作の中でいいアクセントになっています。まさにアルバム曲という感じである意味安心するね。
09. 変わらぬ想い with Scott & Rivers
作詞作曲編曲全てにScott & Riversが関わった曲です。演奏面でもコーラスおよびエレキギターで参加しています。
最初Every Little Thingの「fragile」(2001)が始まったかと思ってびっくりしましたが、そう思わせる感じのミディアムバラードです。この辺はJ-POPに影響を受けたスコリバらしいと言うべきでしょうかね。サビの歌詞も”everything”だし狙ってやっているのかも。笑
10. 泣恋
この曲も06.「アイオクリ」と同じくPerformed by andropです。ザ・miwaの切ないナンバーといった趣でなかなか好み。完全にバラードに行くよりはバンドサウンドに乗せたこのぐらいのテイストが合っていると思う。
こちらは”涙”を表現しているのだと思いますが、01.「SPLASH」と同じく水を思わせるイントロで始まるのが印象的です。最初と最後にしか登場しないAメロはRADWIMPSの曲にありそうな旋律だと思った。男性ボーカルのバンドが歌っても合いそうな感じね。
Bメロのさらっとした空気感も落ち着いたアレンジとマッチしていて良いです。特に”私風になるわ”のメロが好き。サビはキャッチーな美メロでストリングスがよく映えています。歌詞に関しては2番の”オリジナルじゃないけど/誰より思い込めて言うから”がグッときました。
11. あなたがここにいて抱きしめることができるなら
19thシングル(2015)でTVドラマ『コウノドリ』(TBS)の主題歌。作曲がmiwa単独ですが本作では他に02.「結 -ゆい-」と05.「君と100回目の恋」が同じくそうなので、基本的にスローテンポの優しいメロディの作曲を得意としていることがわかります。
実にJ-POPのラブソングらしいアレンジで彩られていますが、ドラマの主題歌ということを思えば定石でしょう。ボーカルをじっくり堪能できるのでこういう邪魔をしない編曲というのもプロの技だなと感心します。アルバムのラストを飾る曲という意味でも効果的だしね。
以上、全11曲でした。バラエティに富んだ一作と言えますが、ほとんどがタイアップありなので少し胃もたれしそうなボリューム感かな。レビューのところでは書きませんでしたが01.「SPLASH」もアクアパーク品川とのコラボソングですし。
アルバム初出曲で気に入ったのは01.「SPLASH」と10.「泣恋」。やはりある程度ビート感があるmiwaの曲が好きみたいです。奇しくも水音イントロ同士でテーマ性を感じたというのも理由かな。
シングルは『Princess / シャンランラン』しか持っていなかったので他のシングル曲及び既出曲も新鮮に聴くことができました。04.「夜空。」は狙いすぎている気がしないでもないけど実は結構好きだし、06.「アイオクリ」も良い曲だなと思える。
でもやっぱり07.「シャンランラン」がいちばん。ビート感+甘いボイスがどうしようもなくツボだと再確認。過去曲でも「ミラクル」「君に出会えたから」「フィロソフィー」とかが好きだし傾向が同じだと思う。笑 あと03.「Princess」も相対的に評価が上がりました。聴けば聴くほど良いね。
続いて初回盤付属のDVDの内容を見ていきます。といってもCDレビューが思ったより長くなってしまったので雑感だけで短く済ませます。
収録されているのは「miwa×keio 第58回 三田祭前夜祭LIVE+メイキング」。miwaの出身校である慶応義塾大学の学園祭である三田祭、その前夜祭ライブの模様が収められています。
三田祭の前夜祭といえばミュージシャンを招いたライブが行われることで有名ですが、2016年はmiwaの凱旋ライブでした。その模様がたっぷり2時間近く収録されているので付属DVDにしては結構なボリューム。
セトリは、01.「ミラクル」/02.「ストレスフリー」/03.「Princess」/04.「441」/05.「片想い」/06.「夜空。」/07.「fighting-φ-girls」/08.「chAngE」/09.「again × again」/10.「ヒカリヘ」/11.「結 -ゆい-」/12.「don’t cry anymore」/13.「君に出会えたから」の全13曲。
ライブ自体(歌唱・演奏)は良い出来だと思います。セトリも悪くない。miwaのライブは行ったことはおろか映像でもきちんと通して観たのはこれが初めてというぐらいですが、結構タオル回し系が多いのね。笑 この中だとタオル回しが合うのは13.「君に出会えたから」ぐらいだと思っていたからちょっと意外でした。
MCもたっぷり入っています。13曲収録で約2時間というジャケ裏の情報を見たときはてっきりメイキングが長いのかと思いましたが、メイキングは5分程度です。このことからどれだけMCに長く時間を割いているかがわかると思います。笑
母校凱旋の学園祭ライブという特殊性もあってのことだと思いますが、それゆえのmiwaの心持、それゆえの客層と反応、その他諸々のテンポラリーな空気感がパッケージされた貴重なディスクといえるのではないでしょうか。
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これはアルバムツアーやるのでは😏
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